活版印刷職人の技術を詰め込んだ「オーナメントカード」ができました。
今回製作したのは全6種類のカードデザイン。活版印刷で用いる「飾り罫」と「活字の裏面」を使って図柄をデザインし、文林堂の山田さんに組版をしていただきました。印刷には、年代物の手フート印刷機(モーター付)を駆使し、何度も微調整を繰り返し、活版印刷ならではの味わいのある仕上がりとなりました。
飾り罫を組み合わせた4柄
文林堂さんを尋ねた際に見つけた、木箱にまとまって入っていた飾り罫。印刷物を装飾するためにパターンや模様でできた罫線を「飾り罫」といいますが、現在では生産されていないため、とっても貴重な素材です。波型やツタ柄など、様々なデザインの飾り罫の中から厳選し組み合わせ、4種類の図柄を作りました。
活字の裏面を使った2柄
活字をよくみていると裏側の面は共通して〓の模様になっています。
組版において、活字に無い文字があった場合などに、活字をひっくり返して暫定的に入れていた模様が下駄に似ていたことから、昔から 〓(ゲタ)と呼ばれていました。
この 〓(ゲタ)を組み合わせて2種類の図柄を作りました。
貴重な飾り罫は専用の断裁機でカットし、微妙な調整を何度も重ねながら図柄を製作していきます。
活字と活字の間にもインテルと言われる小さな「込めもの」を入れることで、綺麗な整列を保ちます。
何度も試し刷りを行い、微調整を繰り返します。
1色印刷しただけでは図柄は完成しません。
柄によっては45度、90度、180度と印刷位置を変えることでデザインが完成します。その度に微調整を行い、確認していきます。微調整がなかなかうまくいかず、調整だけで1日が終わってしまうことも。
今回はたくさんの色を使っているので、印刷色を変えるだけでも大変な作業です。
それでもゴールドやシルバーの色は綺麗に発色するように、印刷の順番を考え、上から重ねて印刷するという徹底ぶり。職人のこだわりにはほんとうに頭が下がります。
文林堂の山田さんにコメントをいただきました
ー 山田さんだからこそ完成できたと思っているのですが、製作してみての感想を教えてもらえますか?
依頼がきたときは待ってましたと思いました。完成まで非常に楽しく製作することができました。
ー 難しかった点や工夫した点はありますか?
飾り罫などはもう生産している先がないので、限られた材料を無駄なく使って完成させる工夫を行いました。
ー 6種類の中で特に難しかった柄はどれですか?
ノルディック柄は微妙な調整がうまくいかず、版の組み替えを3回行いました。飾り罫をカットする際にも、どの位置でカットすると一番よいかを検討しながら作業を行いました。印刷する順番も重なった時のイメージを想像し、綺麗に感じるほうを優先して印刷を行なっています。
ちょっとした細かいことですが、ひとつひとつの積み重ねが大事なことだと思っています。
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有限会社文林堂
1972年創業。福岡市城南区鳥飼にて印刷所「文林堂」を運営。長きに渡り様々な印刷事業を行ってきたのち、現在は、活字を用いた印刷物の製作や活版印刷のワークショップなどを行いながら、手仕事や人と人のつながりから生まれる体験・感動を伝える活動に注力している。