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2020.12.27 Sun / HIGHTIDE STORE Miyashita Park

作品展『P2020』開催。アーティスト・pen publicへインタビュー

東京・渋谷にあるハイタイドの直営店「HIGHTIDE STORE MIYASHITA PARK」では、福岡を拠点に活動するアーティスト・pen publicさんの作品展を2020年12月19日(土)〜2021年1月17(日)に開催します。今からちょうど1年前にアメリカ・西海岸を旅していたpen publicさん。帰国後すぐのコロナ渦によって自粛期間となりコントラストの激しい日々を過ごす中でpen publicさん自身が感じた変化とは?アメリカでのエピソードから本企画の魅力に至るまで、幅広くお話を伺います。

pen public/ペン パブリック

福岡を拠点に活動するアーティスト。デザインブランド〈cheese cheap shop〉を手がける。〈CCS records(福岡を拠点とするレコードレーベル)〉のアートディレクターであり、 同レーベル所属の〈週末CITY PLAY BOYZ〉のメンバーである。
Instagram:@pen_public

夢の世界のようなアメリカの記憶

ー 作品展『P2020』は、今からちょうど1年前に旅したアメリカ・西海岸での記憶から現在までの約1年間での出来事が反映されているということですが、まずは具体的にpen publicさんがこの期間をどのように過ごしたのか教えていただけますか?

2019年の12月から今年の1月にかけて、僕は仲間たちとアメリカの西海岸を旅していました。アメリカで2020年を迎えて、年明けに帰国したらすぐにコロナが流行って、自粛期間になって…。アメリカで過ごした2020年の幕開けから今日までの約1年間は変化が目まぐるしくて、本当に一瞬で過ぎてしまったような気がします。今までの日常が急に覆されて、誰にも会えない、どこにも行けないということ自体が自分の中ですごく忙しかった。それでいて、一瞬ですぎる日々に自然と生活リズムを合わせている自分もいたりして。だからその直前に体験したはずのアメリカとの差が大きすぎて逆に思い出せなくて、非現実的な夢の世界のような感覚がするんです。

ー たしかに、アメリカでの旅からコロナ渦というのは大きな変化だったと思います。そもそもアメリカにはどのような経緯でいかれたのですか?

僕はもともと2019年の冬まではアーティスト活動と並行して他の仕事もしていたんですけど、アーティスト一本でやろうと決めたタイミングが2020年でした。ちょうどその時期に周りの仲間も仕事をやめたり、たまたま同じような境遇のやつが多くて、このタイミングにみんなでアメリカに行こうってなったんです。12月にアメリカにはいってジョシュアツリーで2020年を迎えて、そこから車でサンフランシスコに行ったり、ロサンゼルスのハイタイドの店舗にも行きましたよ。

LAにあるハイタイドの直営店「HIGHTIDE STORE DTLA」にて

ー 特に印象に残っているアメリカでのエピソードはありますか?

サンフランシスコで車上荒らしにあったことですね。もう旅も終盤だったんですけど、車を停めて外で小一時間くらいコーヒーを飲んで帰ってきたら車の窓がバリバリに割られていて、僕のリュックだけが丸ごと盗られていました。リュックの中には前に働いていた会社から支給してもらったMac bookや、日本で描き溜めていたスケッチブック、家の鍵、日本円の現金、アメリカで買ったものなんかも入っていて…。めちゃくちゃ好きなアメリカで最高の2020年を迎えたのに、旅の最後に突き落とされて、今年はもうダメなのかもしれない…って思ってしまうくらいへこみましたね。唯一残ったのは肌身離さず持っていたパスポートとアメリカ滞在中に描き溜めていたスケッチブックでした。いろんなものは盗られたけれど、アメリカでインプットしたものはすべて残っていて、これは2019年までのことはリセットして、新たなスタートをきれってことなのかなと思ってなんとか気持ちを持ち直しました。

サンフランシスコで車上荒らしにあった当時の様子

ー そんな体験をされていたんですね…。

でも、このエピソードにはまだ続きがあって。日本に帰国して2、3週間たった頃に突然アメリカから「このリュック、君のじゃないか?」っていうメッセージが送られてきたんです。もう完全に諦めていたし、いきなりアメリカの知らない人からメッセージが届いたのでめちゃくちゃびっくりしました。聞いたらその人はサンフランシスコで僕のリュックを拾って、中から見つけたレシートに書かれていたホテルに僕の携帯番号を聞いてくれて、わざわざメッセージしてくれたみたいで。色々やりとりをして、リュックを日本まで送ってもらうことができました。

本企画のメインビジュアルにはサンフランシスコから送られてきたメッセージが採用されている

ー それはすごい!中身はどうなっていたんですか…?

アメリカで買ったものや日本円の現金なんかは残っていたんですけど、当時一番盗られてショックだったMac bookと日本で描き溜めていたスケッチブックはやっぱり無くなっていました。一番盗られたくなかったけれど、もしあれが今手元に戻ってきていたら今後の人生のレールが変わっていたかもしれないと思うものだけが綺麗になくなっていて、絵を描くことや、これからpen publicとして生きることについて、このリュックをとったやつが進むべき方向に誘導してくれたんじゃないかとさえ今は思えます。

アメリカ滞在中に描き溜めていたスケッチブック

もう一人の自分が喜ぶ絵を描く

ー アメリカから帰ってきて自粛期間中に感じたことや生まれた習慣などが少なからず今回の作品にも反映されているのかと思いますが、作品制作に対しては何か変わったことはありますか?

自粛期間中は、今まで生きてきて一番「空」を見る回数が増えました。毎日空を見ながら妄想をふくらませる機会が増えたことで、家にいながらも一番旅をしていた気がします。規則的に変化する空だけれど毎日違っていろんな表情があって、そんな空を見るうちにいろんな物事をより“色”で捉えられるようになった気がします。今回展示する作品も、そんな自分の目のフィルターを通して見たアメリカの景色や色を描いています。

ー 展示スペース・タイニーハウス(小屋)はどのような空間になるのでしょうか?

今となってはまるで妄想の世界になってしまったアメリカの旅をフラッシュバックさせて、そのまま現地から運んできたかのように表現できたらと思っています。小屋自体を小包に見立てて、当時の景色や記憶がアメリカから空輸便で送られてきたみたいなイメージで、小屋の外に大きなインボイスや切手を貼ったりして、世界観が作れればと思っています。

展示する作品の一部

ー pen publicさんの普段の制作スタイルについて教えていただけますか?

家の中で音楽を聞いたり、空を見たりしていろんなインプットをしながら、アイデアが降ってくるまで待って、降ってきた瞬間にキャンバスに向かいます。自分の中にある記憶とか妄想の世界を膨らませながら“もう一人の自分と出会うのを待つ”みたいな感覚です。
僕はあまり誰かに向けて絵を描くとかこういうメッセージを伝えたいとかはなくて、自分の中に常にもう一人の自分がいて、そいつが喜んでくれる作品を描くようにしています。自分ともう一人の自分がハグする瞬間があって、それで出来上がった作品を他の人が見て気に入ってくれたら、その人ともう一人の自分がハグできた感覚になるんです。それが一番作品を通してやりたいことだし、今後も大事にしたいと思っています。

ー ノートやポスターなど様々なグッズを一緒に作らせていただきましたが、今回ハイタイドとのアイテム作りで意識したことや、こだわった部分はどんなところでしょうか?

Tシャツとかは今まで自分でも作ったことがあったんですけど、ノートとかピンズはなかなか自分じゃこのクオリティのものは作れないので、ハイタイドと一緒だからこそできたものだなと感じます。誰もが手にとれるようなアイテムは心がくすぐられるし、めちゃくちゃいいものができたと思っています。

今回販売されるアイテムの一部

タイトル「P2020」に込められたメッセージ

ー 展示のタイトル「P2020」にもあるとおり、2020年は世界中の人々にとって歴史に残る年になったと思います。pen publicさん自身で2020年を振り返ってみてどんな年だったでしょうか?

2020年になって帰国後すぐにコロナが流行って自粛期間になったんですけど、どこにも行っちゃダメ、誰にも会っちゃダメっていう色んな条件が世界何十億人に同じタイングで突きつけられるなんて、歴史上一回もないんじゃないかなと思うんです。あの瞬間は世界中のほとんどの人が同じ状況で、どんな有名人だろうが金持ちだろうが、人間がまるで同列に並んだような瞬間だった。そうなった時に初めて、これまで人間が人間を変化させまくって世界ができていたんだっていうことに気づいたんです。

2020年はすごい変わったっていう人がいるかもしれないんですけど、変わったのは家の中と人間の世界だけ。人間が生まれて文明が起こったり、人間同士がぶつかって戦争が起きたりしているけれど、地球自体や外の世界はずっと何も変わっていないんですよね。
自粛期間は退屈で長かったように感じるけれど、それに気づけたおかげで、いろんな妄想をしたり、一見変化のないものが一番変化があるような感覚になったり、自分の些細な心の動きを如実に感じられた気がします。みんなわざわざ言葉にはしないけれど、何か気づきがあったはず。
自分の存在価値や他の人間との関係性、この地球にいるっていうことの全てを考えられたんじゃないかなと思います。2020年は改めて人間が人間に価値を生み出した記念すべき一年だったと思います。

ー 最後に、pen publicさんの今後の展望などがあれば教えていただけますか?

これからやりたいこととかどうなりたいとかはあんまり考えないようにしてるんです。それを口に出してしまうと奇跡というものが数量化されてしまう気がして。結果こうなれた!みたいな感覚で、自分にとって一つ一つが奇跡みたいに感動できる生き方をずっとしていきたいですね。

pen public exhibition 『P2020』

会期:2020年12月19日(土)〜2021年1月17(日)
会場:HIGHTIDE STORE MIYASHITA PARK
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 MIYASHITA PARK South 2F
営業時間:11:00~21:00
TEL:03-6450-6203(店舗)

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