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2021.4.15 Thu / HIGHTIDE STORE Miyashita Park, HIGHTIDE STORE Fukuoka

作品展『Hotel Hyle – Exploring materiality of coffee -』開催。〈Hyle〉主宰・村山圭インタビュー

コーヒー、ワイン、お茶といった日常的にある飲料を、染料や素材としてとらえ直すプロジェクトユニット〈Hyle(ヒュレー)〉。そんな〈Hyle〉は、染めに使う材料、対象物、作業工程、表現方法にも独自の感性と美学が行き届いている。今回は〈Hyle〉を主宰する村山圭さんに、渋谷「HIGHTIDE STORE MIYASHITA PARK」と白金「HIGHTIDE STORE」の2店にわたって開催する展示の魅力から制作する上で大切にしていること、今後の展望に至るまで幅広く話を伺います。

Hyle/ヒュレー

村山圭・山際悠輔・吉田竜二による、素材についての探究するプロジェクトユニット。 日常的なコーヒー・お茶・ワインといった飲料をはじめ、染料や素材そのものと捉え直すことでプロダクトの可能性を追求している。
Instagram:@hyletokyo

新たな視点で素材の可能性を追求する

ー 素材を探究するプロジェクトユニット〈Hyle〉はそれぞれ異なる職を持つ3人が集まって活動されていると伺っています。それぞれの経歴と活動を始めるきっかけは何だったのでしょうか?

〈Hyle〉は村山圭、山際悠輔、吉田竜二の3人で活動しています。僕と山際の本業は空間デザインで、美術館やイベントスペースでの展示空間を設計したり、現場で作品を設置するなどの仕事をしています。僕らの活動のはじまりは、コーヒーの新商品のリリースに合わせてポップアップの空間を作って欲しいという依頼がきたことでした。
依頼がきた際、ただ単にコーヒーを見せるだけではなく、コーヒーを染料として什器や装飾にも使いたいとプレゼンしたところ、クライアントにも興味をもってもらい、山際と一緒に布・紙・木などをはじめ、様々な素材にコーヒーを使った染めの“スタディ(研究+検証)”をはじめていきました。

制作にあたり“天然染め(草木染め)”を2人で実践していったのですが、ポップアップが終わった後も「そのノウハウをもっと生かしてほしい」というまわりの声もあり、本業とは別の活動として研究を続けては成果物を展示していくという流れへと発展していきました。
吉田はプログラマーの傍ら写真の仕事もしていて、ぼくらの活動に興味をもってくれたことをきっかけに、成果物だけでなく活動の過程も記録して発信していこうとなり、3人で活動するようになりました。
基本は僕と山際で実験を繰り返して、方向性がみえてきたところで、吉田が加わって撮り下ろすといったスタイルです。

ー コーヒーに始まり、ワインやお茶など、染めに使う材料や対象物までも様々で新たな領域を広げているように感じます。〈Hyle〉がこれまで行ってきた活動について教えていただけますか?

僕らは染めに特化して活動しているわけではなくて、「日常にある素材が今までとは違った領域へと広がっていくにはどうしたらいいか」ということに主軸においています。なので、染め意外にも素材そのものでプロダクトを作るなど、新たな視点で素材の可能性を追求する活動をしています。
一方で、僕らは“食いしん坊染め”という考え方の元、研究するのは食べ物や飲み物に限定した素材です。誰もが捨ててしまうようなお茶の出涸らし、賞味期限切れのコーヒー、収穫の際に廃棄してしまう作物など、価値がないとされた食物に新たな可能性を見出して、ちょっと違ったかたちで日々の豊かさとして残していけたらと思っています。

ー 私たちの身近にある食べ物や飲み物を新たな視点で捉えて表現しているのですね。それらのアイデアはどこからきているのでしょうか?

僕が飲食店舗とオフィス空間が併設した場所に拠点がありまして、日常的に食への接点が多い場所で働いています。料理人が食材を調理する過程や、実際に料理というかたちになっていくことと、本業の空間やプロダクトをつくっていく過程って似ている部分があると思っていて、そこが大きなヒントになっていると感じます。
また、僕らの活動もまるで料理をするように水をたくさん使ったり、寸胴などの厨房機器も使用します。普段使っている作業テーブルやPCではなく、実際に手を動かし、素材の特徴をつかんでいく過程の先に、なにかしらのアウトプットがみえてきたりするところがアイデアの入口だと思います。

スタディ(研究+検証)を繰り返す

ー 活動する上で〈Hyle〉が一貫して大切にしていることはどんなところでしょうか?

とにかくスタディ(研究+検証)することです。僕らは染色家を本業とはしていないので、草木染めに関してもまだまだ経験不足なところもたくさんあるかと思います。それゆえ、素材の量や大きさ、媒染の仕方や時間、温度などといったたくさんの変数をもとに自分らなりに検証しています。実験を繰り返すなかでだんだん素材の感覚が掴めていって、その先になにかアウトプットできそうなものがみえてきます。
素材そのものをかたちにすることにもトライしているのですが、まだまだお見せできるようなクオリティにはたどり着いていないのが悔しいところです。

ー 自分たちの表現だけでなく、近年ではアパレルブランドやレストランなどとのコラボレーションも多いそうですね。今までのコラボレーションはどういったものがありますか?

ワークウェアブランドの〈MARU TO(マルト)〉とのコラボレーションで、代々木上原界隈のコーヒーショップのコーヒーを使って、コーヒー染めのエプロンを製作しました。その流れで、レストラン〈PATH(パス)〉のシェフ・パティシエの後藤さんもコーヒーに関連したデザートを作ってくれて、コーヒーを衣・食共に感じることができるコラボレーションイベントが実現しました。
また、千葉県九十九里町でピーナッツバターをつくっている〈HAPPY NUTS DAY(ハッピーナッツデー)〉の中野剛くんとは、一緒にピーナッツ染めのプロジェクトもしました。ピーナッツの殻を染めの素材に使うのですが、ピーナッツは外の殻と渋皮があるため、それぞれ殻は黄色っぽい色味、渋皮はピンクっぽいの色味の2色に染まります。そういった違いの面白さを伝えるために、渋谷のスペース〈sta.(エスティーエー〉でピーナッツ染めの制作物とピーナッツバターを使ったメニューを食べられる展示を行いました。

〈MARU TO〉とコラボレーション制作した「コーヒー染めのエプロン」

〈HAPPY NUTS DAY〉とコラボレーション制作した「ピーナッツ染めグローブ」。左がピーナッツの外の殻を染料の素材に使用したもの、右が渋皮で染めたもの

価値がないとされたものを暮らしを豊かにするものへ

ー 本企画のテーマは『Hotel Hyle』ですが、タイニーハウス(小屋)を使った展示空間はどのような構成になりますか?

タイニーハウスは小さな家のような空間なので、単純な壁面だけの展示ではなく、やってみたかったコーヒー染めの部屋を構想してみました。タイトル『Hotel Hyle』の通り、コーヒー染めのプロダクトで溢れたホテルの部屋の一室を表現する予定です。コーヒーが好きな人に体験してみたいと思わせるような空間が提案できたらと思っています。家の中で過ごす時間も増えている今だからこそ、生活を豊かにできることはないかなと提案してみました。

ー 展示販売する作品はどのようなものがありますか?

今回の展示販売は大きく分けると、コーヒー染めの作品と〈quino(キノ)〉とコラボレーションした作品とがあります。〈quino〉を主催している木野園子さんとは昔から友人で、彼女がフラワーアーティストとして活動を始めた時期と僕らの活動のスタート時期が一緒だったこともあり、これまでも花と染めをかけ合わせたグッズを作ってきました。
コーヒーやお花が好きな人にとって、バレンタインやホワイトデー、母の日、父の日など、贈り物として届けるときの選択肢の1つになったら嬉しいなと、今回もご一緒させていただいています。

〈quino〉とのコラボレーションした「ドライフラワー+染めキャンバス」の作品

〈quino〉とのコラボレーションした「ドライフラワー+コーヒー染めメッセージカード」

ー ハイタイドと一緒に作らせてもらったノートに関して、こだわった部分はどんなところでしょうか?

ずっとノートはつくってみたいと思っていたのですが、自分たちではなかなか手が出せませんでした。染めの場合、先染めと後染めがあるのですが、今回は紙からつくるのではなく、すでに紙になったものを後染めしています。ノートの表紙ゆえに厚めの紙を染められたらと思っていたので、ハイタイドさんの今までのノウハウからいくつかテスト用の紙をいただいて検証していき、染め時間の違いを利用して2色展開になるよう、ノートを製作しました。
厚めの紙なので紙の芯まで染まるか、色の違いがでてくるかなど、気になるポイントを一つ一つ解決しながら制作していきました。結果的に一つとして同じものがないノートになり、永く使い続けたいアイテムになったと思います。

リングノートは左からラテカラー、アメリカーノカラー、エスプレッソカラーの3種類。製本はハイタイドの白金の店舗にある〈カキモリ〉の機械を使用

ー 一緒にギフトバッグも制作しました。ハイタイドのギフトバッグを福岡のレックコーヒーさんのコーヒー豆を使って染めていただいたのですが、制作する中で意識したことなどはありましたか?

福岡に拠点を持つハイタイドとのコラボレーションということで、九州のコーヒーショップの豆で染められたら嬉しいなと思っていたところ、コーヒー専門店〈レックコーヒー〉さんにご協力いただけたことからスタートしました。
ギフトバッグはコーヒー染めの中で一つ工程を省略したものです。通常、下染といってたんぱく質の成分などに繊維をなじませていき、よりムラがなく濃く染まるようにするのですが、今回はわざと下染をのぞいて、媒染が同じで模様の違いがでてくるようにしました。そうすることでこちらも一つ一つ特別なギフトバッグになるかなと思っています。媒染も鉄と明晩の2種をつかっているので色は大きくわけて、2種になっています。
巾着に入っているお菓子は〈Neki(ネキ)〉のシェフ・西恭平くんにお願いしました。西くんは友人でいつも美味しいご飯を作ってくれます。そんな彼に、〈レックコーヒー〉のコーヒーに合わせたお菓子を作っていただきました。おかげさまで買い占めたいくらいのギフトバックになりました。

〈レックコーヒー〉のコーヒーを使って染めたハイタイドのギフトバッグ

ー 最後に、今後の活動における展望があれば教えてください。

1つは今回の展示のタイトルにもした『Hotel Hyle』のように、素材を伝えていくホテルの部屋のディレクションや、空間設計や製作などをやっていきたいと思っています。コロナ以降、ホテル自体やホテルの中での過ごし方が変わってきているように感じます。僕らの活動は素材に触れつつ、食を見直すことでもあるので、その土地ならではの素材を使って様々な場所で空間を作っていけるのではと思っています。ホテルで過ごす時間は単に休むだけでなく、なにかしらの体験ができることがより強みとして出てくるのではないかと思っています。今回のコーヒーをきっかけに、ワインの部屋や、お茶の部屋、そういった特別な部屋など、素材に応じて空間を作っていける機会ができたら嬉しいなと思っています。
もう1つはより深く、素材を探究していくことです。伝統的な素材の加工方法と、現代だからできる機材を使うことで無理なく素材を延命できることを勉強していきたいです。素材について探究するサロンみたいなこともやっていけたら楽しそうですね。

Hyle Exhibition 『Hotel Hyle – Exploring materiality of coffee -』
①HIGHTIDE STORE MIYASHITA PARK
会期:2021年4月24日(土)〜5月25日(火)
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20-10 MIYASHITA PARK South 2F
営業時間:11:00~20:00(※時短営業中)/TEL:03-6450-6203(店舗)

②HIGHTIDE STORE FUKUOKA
会期:2021年6月3日(木)〜22日(火)
住所:〒810-0012 福岡市中央区白金1-8-28
営業時間:10:00~20:00/TEL:092-533-0338(店舗)
※アイテムは販売数に限りがございます。

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