第三話
お店は「こういう自分でいたい」
という部分を投影しているところもある。
こういうお店をしていると、そういう人間なんじゃないかと思われることがある。
家に家具やオブジェクトはたくさんあるが、アンビエントの音楽流して、聴きながらワイン飲んだりしてるんですか?なんて聞かれると、全然そんなことはない。普通にバラエティ番組を見ながら、ポテチ食べたりしている。
ある種このお店は、自分の中にあるひとつの側面。また「こういう自分でいたい」という部分を投影しているところもある。
きっと、人って多面的なんだと思う。
ひとりの人に、自分のすべてを見せるということはない。お客さんに見せる顔もあれば、気の知れた友達に見せる顔もあり、家族に見せる顔もある。人にはA面とB面があって、それがぜんぜん違っていても、わりと受け入れられる。まぁそうだよな、みたいな感じで。なので、いろんな自分がいるのもまた、楽しめるようになりたいと思っている。
そんなところも含めて、自分は人が好きなんだと思う。店をやった理由も、そこで得たのも人。それが一番かえがたい。
たとえばここが、これからもずっと存続するかは分からない。ひょっとしたらうまくいかなくなって、なくなる可能性もゼロではない。ただもしそうなったとしても、自分が無一文になっても、今まで出会ってきた人たちの関係性はなくならない。
好きで集めたものや作った空間を共感してもらえるというのは、やっぱり、すごくうれしい。自己を肯定してもらえているような、そんな喜びがあるから続けていける。
店は人と繋がるための表現の場。結局のところ自分は人ありきな人間なんだと思う。
PROFILE
王寺 彰人 | Blumo
ヨーロッパのヴィンテージベースをはじめ、オリジナルで製作した銅製の鉢・樹脂で作られた花器や国内外のアーティストの作品など、花や植物といった自然物をより楽しむことの出来るプロダクトやインテリアを展開。人工物と自然物のバランスを意識した、居心地の良い空間作りを提案している。また、空間装飾やスタイリングなどのヴィジュアルワークも行なっている。