第一話
自分が何となくやっていたことに
全部意味があったことを知り、萌えた。
福永 紋那 | 書店オーナー
1989年兵庫県淡路島生まれ。2023年東京・幡ヶ谷に「OH! MY BOOKS」を開業。店主が1冊ずつセレクトした古本・新刊と、本を読む生活がたのしくなる輸入文具や雑貨・アクセサリーなどを取り扱っている。
めっちゃ執着をしていたのは、ものよりも情報。
広く集めて、自分なりに分析をして、つじつまを合わせたいという謎の欲望がある。
とくにその影響は、音楽からが大きい。
はじめに音楽のことが好きになったのは小学生、ピアノを習い始めた頃のことだ。教えてもらっていたのは簡単な曲だったが、近くの図書館でクラシックのCDを借りて、聴いていくのが好きだった。チャイコフスキーやドビュッシーなど、オーケストラの名曲を耳にした時には胸が高鳴り、感動のあまり泣いた。小学生なのにクラシック好きのおじさんのように。
同時に音楽研究部に入り、学級新聞を書くことになった。先生が「わからないことがあったら何でも調べに行け」と言う人で、学校の帰り道に公民館や市役所に立ち寄り、めぼしい資料をもらっては、せっせとレポートを書いていた。これが、すごく楽しかった。
中学校では吹奏楽部に入部した。演奏するのも好きだったが「どこで何が鳴っているのかを把握しておきたい」という願望がもたげた。そこで指揮者が見るような、楽曲全体の構造や各パートの動きがわかる「総譜」を手に入れ「ホルンはここか〜、サックスはここの部分か〜」などと見ては、ひとりほくそ笑んだ。そしてだんだん、生の楽器の音色が入った音楽が好きだということがわかってきた。
クラシックもずっと好きだったが、小学生の頃は当時デビューした宇多田ヒカル、モーニング娘。などのJ-POPも大好きだった。
ピアノの先生からは、楽譜通りに弾く練習の妨げになるからなのか「やっちゃダメ」と言われていたけれど、実は楽しかったのは、アーティストの曲を耳コピして弾くこと。
また新曲の楽譜が載っている雑誌「月刊歌謡曲」を買っては「誰々の新曲はこんな感じかー」と自分で弾いてみて、納得していた。ただその後音楽番組で流れ、てっきりバラードだと思っていたのに、めちゃくちゃテンポの早い曲でびっくり、なんてこともあった。
あれから何年も経って大人になり、今やYouTubeで耳コピしてる人めっちゃいるし、やってもいいんじゃないか、と思うようになった。またコロナ中ずっと家にいたこともあり、音楽理論のレッスンを受けてみた。すると今まで自分が何となくやってたことに、全部意味があったことを知り、萌えた。