第二話
自分の「好き」がなぜ「好き」なのか、
わからないままだと「好き」と確定できない。
高校生からは、ダンスにハマった。そこでリアーナなどR&Bの音楽と出会い、めっちゃかっこいいやん!となった。そこからジェームス・ブラウンなど古いファンクやソウルに流れ、さらにヒップホップにも憧れ、サンプリングが面白い!となり、そこで使われてるジャズとかもチェックするようになった。
こんなこともあった。それまでまったく聴いていなかったK-POPの中で、急に好きな曲が1曲できた。K-POPの曲作りについていろいろ調べていくうちに、自分がもともと好きだったジャンルを元ネタにした曲がたくさんあることがわかった。
つまりは自分の「好き」が、なぜ「好き」なのかを把握したい。もちろん、好きになってる時点で好きなのだけど、その理由や根拠がないと納得できない。わからないままだと「好き」と確定できない。
自分には、そういうところがあった。
社会人となり、いくつかの企業で働いたのち、独立する前に入った貿易の会社は、とくにクリエイティブな仕事ではなかった。けれど「作る」と言って思い出すのは、業務マニュアルだ。
いつもやる仕事は決まっていたものの、当時はチームのメンバーによってやり方がバラバラだった。そこでなかば自分のために、誰にも頼まれていないのにマニュアルを作ることにした。業務手順を整理し、何か起きた時の連絡先などをリスト化する。新しくわかったことがあれば追記する、というふうに。
なもので、その後自分で本屋をするとなった時、経験のためにアルバイトをしようと思ったけれど、結局やめた。自分がマニュアル遵守人間だとわかっていたので、どこかの本屋で働くと、そっくりそのまま自分に入れて、そこから出られなくなると思ったから。
なのでお店作りは、ぜんぶ自分のルールでやることにした。すでにある「好き」を自分の中で分析し、突き詰めてきたけれど、白紙から何かを作るのは、人生ではじめてのことだった。