第一話
自分の世界と社会がどこか
フィットしてない感覚があった。
高橋 漠 | toumei
1986年福岡県生まれ。多摩美術大学でガラス工芸を学び、卒業後は高橋禎彦氏のアシスタント、あづみ野ガラス工房のスタッフを経て、2015年より福岡を拠点に活動を展開。ガラスを素材とする立体作品を発表しながら、2016年よりガラスウェアブランド「TOUMEI」をガラス作家の和田朋子と共に主宰している。
なにかそういうこと、やっちゃいけないんじゃないかって。そんな後ろめたい気持ちを、僕はずっと持っていた。
たとえばドラクエとか好きなゲームのモンスターを油粘土で作ったり、それをレゴと合体させて、オリジナルのキャラクターどうしで戦わせたり。なんて遊びがすごく楽しくて、本当はそういうことをずっとひとりでやっていたかったけれど、先生や親は「友達と遊び行け」みたいな空気があって、友達の輪に入れてないとバツが悪かったので、遊び行くか、という感じでいつも出て行っていた。
行ったら行ったで楽しいし、べつに不登校ってわけではなかったのだけど。
覚えているのは、みんなで「ケイドロ」をやっていた時のことだ。僕はドロボーチームとして逃げ隠れるふりをしながら、実は図書館に行って、漫画のブラックジャックを読んでいた。しばらくして戻ると、すでにドロボーチームと警察チームが入れ替わってしまっていた。
もうひとり、僕と同じようなドロップアウト組のコウタローという虫好きの子がいた。僕らはサッカーをやっていて、ある日学校の外周を走っていると、コウタローは突然、バーッと草むらに向かっていった。僕が2周めにさしかかると、草むらから「バクちゃん、バクちゃん」と呼ばれたので行ってみると「カマキリのお腹からハリガネムシが出てくるんよ」と、しばらくそのようすをふたりで見ていたこともあった。
自分の世界と、社会との間が揺らいでいる、どこかフィットしてない感覚がいつもあった。