LOVE SOME STORY

第一話

計画性や実用的な意味合いはなく、
ただその時の衝動に寄り添うのだ。

小林 眞 | Out of museum

1960年長野県生まれ。2018年にアトリエ兼ギャラリーショップ「out of museum」をオープン。

ぼくはずっと、とくに定職を持たず、何者でもない状態を目指している。

絵を描いたり、何かモノを造ったり、食堂をやっていた時期もあったし、今もギャラリー的な事をやったりしてるけれど、自分的には何かやっているという意識は昔からないし、今もない。

空間造りというかどうかは分からないけれど、物心つく頃から自分の部屋をいじくって落ち着く場所をつくるのは、無意識にやっていた。

小学生の頃は部屋が昆虫ランドみたいになっていた。とにかく人間よりも昆虫が好きで、いつも虫を観察していたし、虫に囲まれている時が一番心が落ち着いた。

学校が終わるとすぐに山に出かけた。そこには虫が居て、草木が茂り、風が吹いていた。自然と戯れていると自分の存在すら消え、自然そのものと同化して、溶けてゆくような感覚があり、あまりの気持ちよさに、ああ、今、この瞬間に死んでもいいなあ、と思う事もあった。

中学〜高校生になると、部屋はアメリカ的なものになった。ベニヤ板をくり抜いて丸い窓に見立てるとか、まだ行った事の無いアメリカをイメージして、こんな感じじゃないか、というのを形づくりながら日々遊んでいた。特に誰かに見せようというよりは、ただ、自分がその景色を見てみたかった。

もともと誰かの影響はあまり受けないタチだった。人から勧められてモノを買う事はなく、大体は自分で選んだ。

モノを手に入れる時は計画性や実用的な意味合いはなく、ただその時の衝動に寄り添うのだ。

たとえば、山で突然虫が飛び出して来た時に、これは採るべきか、採らないべきか?、などと考える間もなく瞬間的にパパッと採るのと同じで、突然カレーが食べたくなったり、ソフトクリームが食べたくなったりするのも、同じような事かもしれない。

そうして集めたモノを、ただほっぽっておくわけにもいかないので、棚に陳列してみたりする。

そしてそれは収集するのとは、別の意味合いになってくる。