LOVE SOME STORY

第二話

「できる?」と聞かれても、
「できないです」と、言い続けた。

高校生になった時、何か楽器をやってみたくて、一番かっこいいなと思っていたベースを買った。当時は「ベースと言えば男」という印象が強かったけれど、同じく音楽好きの父親から「背の高い女の子がベースやったらカッコいい」と言われ、それももろ真に受けた。でもバンドを組める人はいないから、家でひとり、好きな曲を耳コピして弾いていた。人前では、一度も弾いたことがなかった。

高校卒業する直前、ある日のことだ。事務所から「ガールズバンドの設定の演技の仕事があるけれど、オーディションを受けてみないか」と言われた。私は面白そう、と二つ返事をした。ただその頃は卒業したらライブハウスで働いてみたいと思っていたから、これを受けて、もしダメだったらもうやめるつもりだった。

オーディションでは「歌とか歌える?」と聞かれ、「歌えないです」と、当然のように答えた。「他にできる楽器は?」という質問にも「できないです」と、言い続けた。感じ悪かったかも、とあとから思ったけれど、ベースしか弾きたくないし、別にそれでいいや、と自分を納得させた。

すると受かった。

後から「なんで受かったんですか?」と聞くと「頑なにベースしかやりたくないと言ったから」と言われた。どうやら他の子は、自分の志望ではないパートでも「できます!」と、果敢にチャレンジしていたらしい(今だったらその気持ちも分かる)。

まぁそういう理由だったが、ともあれやることになった。今までで一番大きな仕事だった。

たくさんのスタッフがいて、半年くらいかけての撮影は、すごく楽しかった。この世界がやっぱり好きだなぁ。もうちょっと頑張ってみようかなぁ、と思えた。

大学生になり、学校に行きながらいろんな仕事をした。どれも新鮮で、仕事がくること自体がうれしくて楽しんでやっていたけど、本当にやりたいことではなかった。

やっぱり、私は服が好きだった。

だからモデルになろうと思ったし、本当はテレビではなく、ファッション誌に出たかった。なので思い切って、別の事務所に移ることにした。

そうしていくうち、だんだん、どんどんと自分のやりたいことがわかってきた頃、また人生を変えてくれた、ひとつの出来事があった。

きっかけは、Instagramだった。