第一話
僕なりの、何かしらの
意味なりストーリーはあった
鋤田光彦 | 鋤田収集事務所
福岡県八女市を拠点に収集活動を行う。集めることで見えてくる何かを探るために日々ものを集め、それを店という形で表現。
どういうわけか僕は、小さい頃からチラシを集めてしまうクセがあった。 偶然、家のポストに投函された不動産屋さんのチラシ、博物館や美術館でもらえるイベントや展覧 会のフライヤー、旅館のパンフレット、役所にある市の広報誌、そういうのをとにかく収集しまく るのが好きだった。そこには自分に必要のない情報であっても、まったくかまわなかった。
チラシが置いてあるラックの端から端までぜんぶ取っていく、なんてことをおもしろがっていた時もあったけれど、そこまで収集すると、さすがに収拾がつかなくなるぞと思い始めて、なんとなく 手に取るもの、取らないものを選ぶようになった。
じゃあ、その選ぶ基準は?と聞かれても、もはや直感としかいいようがなかった。手に取らされている段階で、すでに心惹かれている。その感覚みたいなのは大事にしつつ、物理的には触り心地にひっかかりがあるもの、ざらついているもののほうが、つるっとしているものよりは、惹かれているような気はする(多分)。
そうこうしていくうち、これらをどんどんカテゴライズをするようになっていった。地図は地図、アートはアート、あとは「自分が住んでいたかもしれない部屋」というカテゴリで、住むところを借りる時に内見した、間取りの紙もファイリングした。そう、確かに僕なりの、何かしらの意味なりストーリーはあって、そういう「選ぶ」行為をし続けてきたことが今、「鋤田収集事務所」の活動の原点となっているのかもしれない。
と、今はじめて気づくのだった。