第三話
僕は人間だけど、人間とダイレクトに
接するのはちょっと厳しい。
そんな80〜90年代ゆえのやっちゃった感は、微妙に体感しつつも、実のところはわからない。僕は92年生まれ。ギリギリの時代には育っていて、親近感はあるものの、生々しくは見ていない
そんな「ちょっと前まではあったけれど、もうわからない感覚」が、時代を経ていくとどうなるのか。そこを振り返るのに、今がちょうどいい時期のような気がしている。だからサンプルを集めることで、理解できるんじゃないかと思っている。
「鋤田収集事務所」という屋号にしたのは、そういう理由でもある。「売る」というよりも「集める」ことで、体系化してみたいという欲がある。
既存の価値があるものにはあまり興味がない。だけど最初から価値がないものを扱って、上げていくのは難しい。
たださっきのチラシの話もそうだけど、量を見ることで、判断が微妙に積み重なってくる。微妙なニュアンスで「イケる、イケない」というのがわかってくる。値段もおのずと決まっていく。
そうして「売れる、売れない」という軸も生まれてきてはいるけれど、別に「イケる、イケない」という基準が自分のなかでしっかりあるので、裏切ることはない。偏愛感は、ちゃんとある。
僕は人間だけど、人間とダイレクトに接するのはちょっと厳しい。ただものを経由すると、すごくコミュニケーションががとりやすくなることに気づいた。だから僕は僕なりの行動として、ものを集めて、ものを通して人を見ている。