第二話
とくに自分に審美眼があるとも、
目利きだとも思っていない。
僕は基本、ものを目で見ることはもちろん、手にすることで入ってくる情報が、すごく大事だと思っている。なるべく持って触って、厚みとか形、重さを確認するようにしている。
そうして、今の焼きものとの違いを見つけたり、なんでこれが良しとされてるんだろうと考えたりしながら、自分で噛み砕いていく。
ここ数年、島根の布志名焼 舩木窯の舩木研兒さんという陶芸家に興味を持っている。
民藝館のショーケースに展示されているのを見ても「かっこいいな」で終わるのだけど、実際に手にして触れてみると「この人、ロクロの真ん中残すな」という細かなクセが知れる。その後、骨董市なんかの何も情報がないところで「これ舩木さんかな?」というものを見つけた時、そのクセが判断の基準にもなってくる。
民藝館というちゃんとした組織があるし、すでに評価されているものも多くあるけれど、それだけじゃなく。世の中にはまだ気づかれていない、知られていないものもきっとたくさんあるはずで、それを見つけたいと思っている。
かといって「何か人と違うことをやってやろう」と、思っているわけではなく。ただそれまでの経歴がファッションやインテリアなので、民藝だけを見ている人とは、視点がちょっと違うのかもしれない。
焼きものも、器としてじゃなくトレイやペンスタンドに使ったっていいし、一緒に置くものも、どちらかというとポストモダンの、ちょっと奇抜なニュアンスのほうが面白いと思う。
それは店だけでなく、家の中でもそうだ。
イタリアの80年代のものと舩木さんの器が一緒になって溢れ返っていて、隣にあると、意外と今まで民藝館で見ていたスタイルとは違うように見えてくる。そうして「これ、日本家屋じゃなくても全然いいじゃん」なんてことを思いながら、楽しんでいる。
とくに自分には審美眼があるとは思っていないし、目利きだとも思っていない。
ただとにかくものが好きで、人にはないほどの熱量を持っている。そして何か新しいものを集めて、それを店という場で表現して、お客さんに伝えて、価値を見いだして楽しんでもらう。これが、僕らの仕事だと思っている。
そう、インテリアってそもそも、楽しくないとダメだと思うから。