LOVE SOME STORY

第二話

好きな紅茶は飲んで「あぁ気持ちいい」
と思い続けられるもの。

好きな言葉がある。

自分の目で見て、知って、考え抜いたことは、本当に自分の身になっている。渡された情報だけでなく、ふと自然と頭の中から出てくる表現が変わってくる。お茶作りのプロセスひとつとっても「この人はこうやってる」とか「ここを細工してる」とかが、わかるようになってくる。それはもちろん、品質にもつながってくる。

たとえばこの間、産地から来たサンプルの中から選んだものは、ダージリン ピュグリ茶園の2024年の130番目のロット。同じ茶園サンプルの125番や126番も飲んだけれど、130番は全然違ってすっきりしている。

サンプルが届くと、すぐにテイスティングを行う。お店の奥にあるキッチンで、いくつものテイスティングカップを用意し、届いた茶葉を周到に並べる。ちなみにインドの取引先では非常に多くのティーサンプルを試飲する為、専用のスタッフが必ずいて、テイスターが準備をすることはない。私も将来、専用のスタッフが必要になるくらいの会社になりたい。

テイスティングの抽出方法は、茶葉3gに熱湯150mlを注ぎ、5分蒸らした状態で行う。現地では2.5gにする場合もあるけれど、ウーフでは3gを採用している。通常の紅茶と比べると単純に3-4倍になるので、当然渋くて濃い。そして熱い時だけではなく、必ず冷ましてからもテイスティングする。そうすると本質がわかる。冷めてから本質がわかるのは、人も同じかもしれない。

適正なお湯の温度は95〜98℃。中国で「蟹目」と言われる細かい泡の状態から温度が一気に上がり、泡が大きくなる瞬間に火を止め、すかさず注ぐ。この「沸き始め」の湯こそが、最も酸素が含まれており、おいしい紅茶を抽出してくれる。

自分の好きな紅茶の基準は、はっきりとある。飲んだあと渋みが口の中で甘みに変わり、その心地より余韻が長く続くもの。これを茶用語でPungency(パンジェンシー)と呼ばれており、とても重要な部分だ。

例えば、赤ワインでも飲んだ後の渋みに心地よいものと、そうでないものがある。それと全く同じだと感じている。

また、香りや味はもちろん、茶殻もよく観察する。茶殻の中でムラがないかを入念にチェックし、またグラデーションが美しいものを選ぶようにしている。茶殻は絶対にうそをつかない。

同じ茶園で、条件もほぼ同じなのに、ロットによって品質は必ず異なる。これはお茶が農作物であり、天候、テロワールによって品質の8割を決め、残りの2割は作り手によるものであるから。

実際に、茶園の責任者であるマネージャーが変わると、キャラクター、品質は必ず変わる。

すると前のものはもう二度と手に入らない。全ては一期一会。