LOVE SOME STORY

第三話

好きな紅茶に出会えるチャンスを増やしたいし、
出会った瞬間に選べる自分でいたい。

尊敬している紅茶研究家の磯淵猛先生が「お茶は人が作るから素晴らしい」とおっしゃっていて、感銘を受けたことがある。

お茶は、ツバキ科の茶の木からつくられる。生の葉を摘み、酸化発酵させることで紅茶に仕上げていく。りんごを半分に切った時のことを思い出すとわかりやすい。茶色くなって、甘い匂いがしてくる。紅茶はこの作用を使って香りを特別なものにしていく。

それらの作る工程のすべてに人の感性が入っていく。まず、茶摘みはインドでもスリランカでも、ほぼ人が手で摘んでいる。ダージリンの場合、これを朝の9時から夕方の4時まで行う。まだ水分が含まれていて固い生の葉を、メッシュでできた層の真ん中に乗せて風を当て、ひと晩かけてしおらせる。それを、いつまでしおらせるのか、その後の揉んで酸化発酵させる工程も、どのタイミングでどのくらいの圧をかけて揉むかなど、すべて作り手の感性にかかっている。ただ、作り手の感性だけではなく、世界的な市場の変化に合わせていく。

近年はユニークな香りがあり、渋みが少ないお茶の評価が高い傾向にある。お茶は嗜好品であり、継続してお茶を作り続けていくことが重要だと感じている。

そうして、産地で作られたたくさんのお茶の中から、私の好みに合わせてサンプルが送られてくるのだが、自分がテイスティングして心から欲しいと思えるお茶は、100から200ロット試して、1つ見つかるかどうか。このサンプルを出来るだけ多く試すために、出来るだけ産地との信頼関係を構築する必要があり、出来るだけ産地を訪れたい。また、産地も私たちも継続してお茶に携わっていくために、たくさんお茶を取り扱いたい。

私の仕事はもう、それしかないと思っている。

そのために一番大事にしていることは、私の心身が健康であること。まずは「添加物を抜く」ということを、ここ十何年も試みている。

もちろん日本で暮らしている以上は仕方ない部分もあるけれど、外食する時は場所を選んでいるし、ファストフードのお店には行かない。それだけでなく歯磨き粉も、石鹸も、服に匂いがつくので洗剤も、ナチュラルのものしか使わない。お茶は自然なものなので、 それに対峙して、自分も自然であろうとしている。

そうすることで、お茶と対峙した際に、直ぐに自身が必要なお茶かどうか分かるようになった。こうして選んだお茶を、出来るだけ多くの方と共感したい。

それが私の存在意義であり、人生の主目的だと感じている。

PROFILE

大西 泰宏 | 株式会社ウーフ 代表取締役

紅茶専門店勤務後 中国へ留学。帰国後 2002年兵庫県芦屋市にてウーフ創業。現在に至る。自身が納得したお茶だけを直輸入。またオリジナルティーは天然精油、ハーブ、スパイスなど全て天然素材のみを使用、身体に馴染むようなブレンドを心がけている。

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